2006年10月27日
第一回目は「癒し(いやし)」についてです。
巷ではいろいろな癒しグッズなる物が見受けらます。
人により癒しの感じ方が違い、例えば耳から音楽などを取り入れるリスニング、鼻からお香などの臭いを取り入れるアロマテラピー、目からリラックスするものを取り入れるアイリラクゼーションなどそれは多種多様です。その中には熱帯魚業界に関連したものもたくさんあり、色とりどりの熱帯魚達を飼育することや、水中ガーデニングと呼ばれる水草だけを水槽に入れて眺めるものなどもあります。
特に、数年前にちょっとしたブームになっていたのが「
クラゲ」です。これはプヨプヨしたゼリー状の物体が水槽の中を「あっちユラユラ、こっちユラユラ」と何を考えているのかわからない姿で泳いでいるのを見て心を安らげるといったアイリラクゼーションです。
ちなみに、クラゲは世界の海(種類によっては淡水に生息しているものもいる)や日本の海などで普通に見る事が出来る生き物であり、スーパーなどで売っている中華クラゲとは違います(「誰が間違うかこのボケ!」ひとりつっこみ)。
マスコミで多く取り上げられたせいかこのごろ「クラゲって簡単に飼育できますか?」、「何を食べますか?」といったクラゲの問い合わせが増えていました。以下は当時私とお客さんとのやり取りです。
実況中継でどうぞ。
店内に二人の若いカップルが入ってきた。
男はサラリーマン風。
女は厚底ブーツを履いている今どきのねーちゃん。
私「いらっしゃいませ」とマックのねーちゃん顔負けの
営業スマイル100%でむかえる。
客女「クラゲはいますか?」やはりそうきたか、今日で3人目だ。
私「はい、こちらの水槽にいますよ」
客女「きゃー!かわいい」
客男「・・・・・」女が男に向かって「クラゲって見てると心が癒されるんだよね〜」
客男「ふぅ〜ん・・・・・」とそっけない返事。男は全く無関心といったところだ。
客女「これって飼うの簡単ですか?」
私「はい、そうですね〜長期飼育は・・・」と答える暇もなく次の質問がくる。
客女「どうやって飼うんですか?」おいおい、私の話しを最後まで聞いてくれよー、一番大事な事言おうとしていたのに〜。
私「はい、飼育器具から説明しますのでこちらにどうぞいらして下さい。」ヤバイ長期飼育は難しいと言わなければ。なのに心とうらはらに私の口はマシンガンのごとく営業しゃべりをつづけている。まっいっか!最後にそれを言えば。
私「まず、クラゲ飼育専用水槽がありますのでこちらを購入していただきます。水道水を入れ塩素をとばすために中和剤を規定量入れていただきます」よ〜しここまでは順調だ。しかもおねーちゃんはスマイル100%で聞いてくれている。
私「そして人工海水を水に溶かしていただき、海水の比重を計ってもらいます。比重があいましたらクラゲをゆっくりと水合わせをしていただいて水槽に入れます」
客女「結構大変ですね」だんだんおねーちゃんの口数が減ってきた。
私「慣れてしまえば簡単ですよ」とさり気なくながす。さーこれからが本題だ。しかし相変わらず男は無関心である。
私「温度は25℃に合わせて、水質はアルカリ性で・・・」、「餌はブラインシュリンプを一日に3〜4回与えて・・・」、「水換えは2週間に3分の1・・・」、「アンモニアが亜硝酸に変わるので・・・」。
客女「☆@¥=%#!>」。
説明時間およそ30分。ひとしきりしゃべり気分もすっきりした私は、ふとおねーちゃんの顔を見た。
しかし、おねーちゃんの顔には暗雲が立ちこめていた。
100%だった笑顔も今では
−1000%のひきつった顔。
そして3分くらいしてからお決まりの社交事例の言葉「検討してからまた来ま〜す」と
爽やかスマイル2000%で店を出て行った。
そして残ったのは甘い香水の香りだけであった。
私は最後まで言えなかった「長期飼育は難しいけど、飼えるのにな〜」を心の中でつぶやいていた。
正直に説明したつもりなのに・・・。 きっと「癒し」を感じるどころか「嫌がらせ」にしか感じられなかったのかもしれません。
何が言いたいかって言うとクラゲを見ることは「癒し」になると思うが、飼育となると「癒し」どころか手間がかかり「苦しみ」となる場合が多いのです。本当にクラゲで「癒し」を感じるにはそうとうの努力と能力が必要であり、簡単でない事がわかっていただけたことでしょう。
クラゲは水族館や熱帯魚店で眺めるか、ビデオに撮ってテレビで見るのが一番の「癒し」効果が感じられるのではないのではと考えます。商売をしなくてはいけない立場の私がこんな事を言ってしまっていいのかと思うのですが、これが私の本音であるのであしからず。
そうそう、あれから8ヶ月が過ぎようとしているが今だにあのカップルは店にきていません。そしてクラゲ達は売れないままどんどんしぼんでいき、最後にはとけてしまいました。今やもう店にはクラゲはいません‥‥‥‥‥。